神戸地方裁判所 平成8年(行ウ)5号 判決
原告
藤本幸裕(X)
右訴訟代理人弁護士
藤本尚道
被告
神戸市固定資産評価審査委員会(Y)
右代表者委員長
松田光正
右訴訟代理人弁護士
飯沼信明
事実及び理由
第四 当裁判所の判断
一 争点1について
1 評価基準の違法性について
(一) 地方税法三八八条一項は、「自治大臣は、固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続(以下「固定資産評価基準」という。)を定め、これを告示しなければをらない。」と規定し、地方税法四〇三条一項は、「市町村長は、第三百八十九条又は第七百四十三条の規定によって道府県知事又は自治大臣が固定資産を評価する場合を除く外、第三百八十八条第一項の固定資産評価基準によって、固定資産の価格を決定しなければならない。」と規定している。
(二) ところで、憲法九二条は、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」と規定し、憲法九四条は、「地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。」と規定していることからすると、法律の範囲内で地方公共団体が条例を制定し実情に応じた課税を行うことを、憲法は予定しているというべきである。地方税法二条が「地方団体は、この法律の定めるところによって、地方税を賦課徴収することができる。」と規定しているのは、右に述べたところを明らかにしたものと解される。したがって、地方税の賦課徴収について法律で定めることは、地方自治の本旨に反しない限り、憲法上容認されていると解され、同法三条が「地方団体は、その地方税の税目、課税客体、課税標準、税率その他賦課徴収について定をするには、当該地方団体の条例によらなければならない。」と規定しているのも、法律の範囲内で条例を制定することができることを前提としているものと解すべきである。
そうすると、地方公共団体たる市町村の普通税の一つである固定資産税について、前記のとおり地方税法が市町村長に対し評価基準によって固定資産の価格を決定することを義務づけていることは、固定資産の評価について全国的な統一を図り、市町村間の均衡を保つ必要があると解されることにも鑑みると、地方自治の本旨に反するということもできないから、評価基準を適用することが憲法九二条、九四条、地方税法二条、三条に違反するということはできない。
(三) また、憲法八四条は、租税を課すには法律又は法律の定める条件によることを必要とする旨規定しているが、課税上基本的な重要事項は法律で定めたうえ、具体的命細目的な事項は命令等に委任することを許容していると解される。そうすると、地方税法三八八条一項は、前記のとおり固定資産評価基準の作成を自治大臣に委任しているものの、地方税法は固定資産税の課税要件の一つである課税標準について「適正な時価」と規定しており、地方税法三八八条一項は「適正な時価」の具体的、細目的、技術的な算定基準の作成を委任しているに過ぎないこと、固定資産評価基準の内容が相当程度に専門的技術的なものとならざるを得ないことを考え合わせると、評価基準を適用して評価することは、憲法八四条に違反するということはできない。
2 評価基準の合理性について
(一) 評価基準は、固定資産税の課税標準となる土地、家屋の評価の算定方法であるところ、憲法上、納税の賦課は法律又は法律の定める条件によるものとされている(憲法八四条)。したがって、いかなる課税標準をとるか、また、課税標準としていかなる評価方法をとるかは立法政策の問題であって、このことは立法府の裁量に委ねられているところであるから、評価基準は、それが著しく不合理であると認められるものでない限り違憲の問題は生じない。
(二) これを本件についてみると、固定資産税は資産価値に着目されて課される財産税と解され、資産価値を交換価値をもってはかることにも合理性があること、「時価」なる概念は、通常、正常な取引条件の下に実現される所定の時点における取引価格を意味すること、投機目的又は将来の期待による価格形成要因が不正常な条件として排除される場合の価格は当該土地の利用利益に近接すること、評価基準によれば標準宅地は正常売買価格に基づいて決定するものとされていること等に照らせば、その課税標準又はその算定基礎となる土地の「適正な時価」(地方税法三四一条五号)とは、正常な条件の下に成立する当該土地の取引価格、すなわち、客観的な交換極値(以下「客観的時価」という。)をいうものと解すべきであり、売買実例価額(ただし非正常要素を除いたもの)を基礎とする評価基準には合理性が認められるというべきである。
(三) なお、この点に関して、原告は、生存権的土地と非生存権的土地を区別し、生存権的土地については、収益還元方式によって評価がなされるべきである旨主張する。しかしながら、どのような評価方法によるかについては、法は評価基準に委ねており(法三八八条一項)、収益還元方式によるか否かは政策の問題にすぎないところ、前記のとおり、憲法はどのような政策を選択するかを一義的に定めているものではない。したがって、評価基準が憲法二五条、二九条、一三条、一四条に違反するということはできない。
(四) 以上に加えて、評価基準の土地の評価方法のその他の点についても、土地を評価する基準・方法として合理性を欠くというべきものは見当たらないから、右評価方法は、「適正な時価」を算定する方法として一般的に合理性を有するということができる。
3 以上のとおりであるから、争点1に関する原告の主張は採用することができない。
二 争点2について
1 被告の算定方法
争いのない事実、〔証拠略〕によれば、被告は、評価基準、評価要領及び本件通達等に基づいて、本件土地を次のとおり評価したことが認められる。
(一)本件土地は、JR六甲道駅から南西へ徒歩数分のところに位置している。本件土地は登記及び現況地目がいずれも宅地であり、評価基準及び評価要領の市街地宅地評価法を適用した。また、付近一帯は小規模な店舗と中層の共同住宅と低層の戸建住宅が混在している地域であるので用途地区を併用住宅地区と認定した。
(二) 標準宅地の選定
本件土地が接する街路の状況、公共施設等の接近状況、家屋の疎密度その他の宅地の便等からみて区分した状況類似地区内で標準的な宅地と認められる標準宅地として、神戸市灘区琵琶町一丁目一番九六に所在する土地を選定した(本件標準宅地)。
(三) 本件標準宅地の適正な時価の評定
本件標準宅地については、平成四年七月一日を価格調査基準日とした鑑定評価価格の一平方メートル当たり八三万円を基に、平成五年一月一日までの地価動向を考慮して〇・八四〇の時点修正を行い、その七割を目途とした価格である一平方メートル当たり四八万八〇〇〇円をもってその適正価格とした。
(四) 主要な街路の路線価の付設
本件標準宅地の一平方メートル当たりの価格を四八万八〇〇〇円としたことから、本件土地に係る主要な街路(以下「本件主要な街路」という。)の路線価を一平方メートル当たり四八万八〇〇〇点とした。
(五) 本件土地に沿接する街路(以下「本件街路」という。)の路線価の付設
本件土地は本件主要な街路に沿接すること及び本件標準宅地の路線価を基礎とし、街路の状況、公共施設等の接近状況、家屋の疎密度、その他宅地の利用上の便等の相違を総合的に考慮して本件街路の路線価を四八万八〇〇〇点と付設した。
(六) 画地計算法の適用について
(1) 神戸市長の評価
本件土地の形状は、概ね別紙図面1のとおりであり、神戸市長は、東側が本件街路に面し、間口は約一〇メートル、奥行は約二四メートルであるとして、奥行価格逓減率〇・九七を、また、不整形地であるとして不整形地補正率〇・九五をそれぞれ適用し、本件土地の平成六年度の評価額を二億三八一八万三八六四円、固定資産特例課税標準額を二九七七万二九八三円と決定した。
(2) 被告の評価
被告は、本件土地の市長評価経過について検討した結果、形状を考慮し、路線よりおおむね画地の中線の位置によって評価図上で測定した深さ(奥行距離)を四三メートルとして奥行価格逓減率〇・八五、奥行距離を間口距離で除した数値が七以上八未満であるとして奥行長大補正率〇・九五を適用し、不整形地補正率は適用せず、また、本件土地の一部が公共の用に供する道路であることについての評価は、当該道路部分の地積が明らかでないとして〇・九〇の補正率を適用するのが妥当であるとして、評価額を一億八七八三万二七九六円、固定資産税特例課税標準額を二三四七万九〇九九円とする旨決定した。
2 原告は、被告による本件登録価格の評価方法に違法な点があると主張しているので、この点について、以下検討する。
(一) 本件通達に依拠して評価したことについて
争いのない事実、〔証拠略〕によれは、本件通達は、宅地の固定資産評価にあたっては、地価公示法(昭和四四年法律第四九号)による地価公示価格、国土利用計画法施行令(昭和四九年政令第三八七号)による都道府県地価調査価格及び不動産鑑定士又は不動産鑑定士補による鑑定評価から求められた価格(以下、「鑑定評価価格」という。)を活用することとし、これらの価格の一定割合(当分の間この割合を七割程度とする。)を目途とすること等を内容とするものであり、事実上本件通達は評価基準と一体のものとして扱われ、本件登録価格もこれらに依拠して決定されたことが認められる。
ところで、本件登録価格が本件通達に依拠して決定され、その結果従前に比べ税負担が増大したとしても、本件通達の内容が法の正しい解釈に合致するものである限り、本件登録価格の決定は法の根拠に基づくものとして適法であると解される。
固定資産税の課税標準又はその算定基礎となる土地の「適正な時価」(地方税法三四一条五号)とは、正常な条件の下に成立する当該土地の取引価格(客観的時価)をいうが、地価公示価格等は右取引価格の算定を目的として土地の評価を行った結果の価格であることからすると、固定資産の評価にあたり地価公示価格等を活用することは法の趣旨に合致するものである。そして、評価基準等による評価方法に内在する評価結果の幅を考慮すれば、評価額が客観的時価を超えることがないように、ある程度控えめに評価し、地価公示価格等の七割程度を目途として土地の評価を行うことには合理性がある。これらの点を考え合わせると、本件通達の内容は、地方税法の正しい解釈の範囲内にあるというべきであり、本件土地の評価を行うにあたって本件通達に依拠したこと自体は違法とはいえない。
なお、従前の評価額が客観的時価に比して著しく低額であったところ、いわゆる七割評価をするにあたり法律改正等の手続をとらなかった点についても、低額評価が規範的効力を有する慣習にまで至っていたことを認めるに足る証拠はなく、適正な時価が客観的時価を意味し、一般的にいわゆる七割評価は右客観的時価を上回るものではないと考えられる以上、違法とはいえない。
(二) 評価要領に従って評価したことについて
前記二1で認定した事実によれば、本件評価は評価要領に従ってなされているところ、評価要領は、評価基準に従ってより具体的に価格の算定方法を規定したものであることが認められ(評価基準第1章第3節二(一)4参照)、その内容において合理性を欠くような事情は窺われない。したがって、評価要領における評価方法も法及び評価基準に従ったものであるということができ、評価要領に従って評価したこと自体は違法とはいえない。
また、〔証拠略〕によれば、神戸市は土地評価要領を基準年度ごとに改正してきており、本件評価要領は平成六年二月一日に定められたものであるが、二月一日より前に行われた評価作業についても、改正内容を見越して作業がなされ、最終的に市長が土地の評価を決定したのは平成六年四月一二日であることが認められる。したがって、評価要領に従って評価がなされたのは一部の土地についてのみであるから公平の原則に反するとの原告の主張は採用することができない。
(三) 平成四年七月一日を価格調査基準日とし、平成五年一月一日までの時点修正しかしていないとの主張について
前記二1で認定した事実によれば、神戸市長及び被告は、本件土地について、平成四年七月一日を価格調査基準日として本件標準宅地について鑑定評価価格を求め、これに平成五年一月一日までの地価動向を勘案した時点修正を行って(時点修正率〇・八四〇)算出した価格を基に評価を行っていることが認められる。
ところで、地方税法三四九条一項は、土地課税台帳等に登録すべき価格を基準年度に係る賦課期日における価格としているから、右登録価格を算定すべき基準日は、賦課期日である当該年度の初日の属する年の一月一日である(三五九条)と解され、これを本件についてみると、平成六年一月一日における「適正な時価」をもって登録価格とすべきである。
もっとも、地方税法四一〇条は、市町村長の価格決定を賦課期日の約二か月後に当たる二月末日までに行うべきものとしており、多数の固定資産について、市町村が評価基準に基づき評価を行った後、都道府県間及び各都道府県内の市町村間の評価の均衡を図るなどの評価事務を約二か月の間にすべて行うことは困難である。そうすると標準宅地の賦課期日における価格の決定については、賦課期日から評価事務に要する相当な期間をさかのぼった時点を価格調査の基準日とし、時点修正率の決定も一定期間を遡った時点までの地価動向を勘案してこれを行わざるをえず、法もこれを許容しているものと解される。
しかしながら、右により求められた標準宅地の価格を基に決定された当該土地の価格が、結果的に賦課期日における右土地の客観的時価を上回った場合には、右限度において当該価格決定は違法と評価されるというべきである。
(四) 具体的評価内容について
(1) 本件標準宅地の鑑定評価について
争いのない事実、〔証拠略〕によれば以下の事実が認められる。
神戸市長ないし被告が本件標準宅地の価格を決定する資料とした不動産鑑定士による鑑定評価においては、取引事例比較法による比準価格と収益還元法による収益価格を求め、比準価格を重視し、収益価格を参考にして鑑定評価額が決定されている(一平方メートル当たり八三万円)。
取引事例比較法の比較事例とされた売買実例地は三件あるが、右三件から比準して価格を求めるに際し、うち一件(aとする。)は、事情補正を六〇分の一〇〇、事例地の個別的要因の標準化補正を一〇三分の一〇〇、地域格差を九〇分の一〇〇として計算し、別の一件(cとする。)は、事情補正を八〇分の一〇〇、地域格差を八五分の一〇〇として計算しており、また、残りの一件(bとする。)の事側に係る土地は標準宅地から直線距離で約一四七〇メートル離れており、cの事例に係る土地は標準宅地から直線距離で約一三六〇メートル離れていた。また、収益還元法において採用した還元利回りは〇・〇三であった。
右事実に基づき検討するに、原告は、aないしcは、補正率及び標準宅地からの距離に鑑みると、取引事例比較法におけるサンプル事例としては不適当であり、収益還元法で採用された還元利回りは不合理であり、結局本件標準宅地の鑑定評価額は正当性、合理性、信頼性に乏しく採用することができない旨主張する、しかし、売買実例地が一三六〇メートルあるいは一四七〇メートル離れているからといって直ちにその売買実例地が不適当であるとは考えがたく、また、補正率の数値が不合理であるというならともかく、単に補正率の数値の合計が大きいということだけでその売買実例地が不適当であるということはできない。また、収益還元法において還元利回りを三パーセントで計算したことが不合理であることを窺わせる事情はない。その他、市長ないし被告が本件標準宅地の価格を決定する資料とした本件鑑定内容につき不合理な点があることを窺わせる事情もない。
したがって、本件標準宅地の価格決定が評価基準に適合しないということはできない。
(2) 画地計算法について
争いのない事実、〔証拠略〕によれば、以下の事実が認められる。
本件土地ないし建物敷地の形状は、概ね別紙図面1のとおりであり、方形地に比してその利用に一定の制約があるものと認められ、不整形地補正率を適用するのが相当である。不整形地の補正については、不整形の度合に応じた補正率を乗ずる方法でなされるが、不整形の度合は、当該土地に近似する整形地(近似整形地)を外側蔭地と内側蔭地の面積がおおむね等しく、かつ、合計面積ができるだけ少なくなるように想定し、右近似整形地と比較してその不整形の状況と面積の大小等に応じて認定される。そして、本件土地の近似整形地は概ね別紙図面2のとおりに想定することができ、近似整形地面積約五三〇平方メートル(私道部分を含む場合)あるいは約四五〇平方メートル(私道部分を含まない場合)に対する蔭地合計面積約六〇平方メートルの割合は約一一パーセント(私道部分を含む場合)あるいは約一三パーセント(私道部分を含まない場合)であり、(私道部分を含むか否かに関わらず)評価要領における不整形地補正率は〇・九五となる。また、近似整形地の奥行距離は約四二メートル(私道部分を含む場合)あるいは約三九メートル(私道部分を含まない場合)であり、評価要領における奥行価格逓減率は〇・八六(私道部分を含む場合)あるいは〇・八八(私道部分を含まない場合)となる。
なお、被告は不整形地補正率を適用せず、奥行長大補正率を適用しているが、不整形地補正率を適用しなかった理由が明らかでないうえ、本件土地の形状からすると、不整形地補正率を適用する(したがって、これと併用できない奥行長大補正率は適用しない(〔証拠略〕))のが合理的であると認められる。
また、本件私道の幅員が四メートル未満であり、側方路線影響加算法や二方路線影響加算法の適用はなく、本件私道に面していることによる影響を補正することが予定されていない本件においては、原告主張の正面路線に面していない区分を設ける方法は採用することができない。
(3) 「公共の用に供する道路」の認定について
争いのない事実、〔証拠略〕によれば、以下の事実が認められる。
原告が本件土地を購入した際に仲介した宅地建物取引業者から提供された平成三年九月三〇日付け重要事項説明書には「私道の負担に関する事項」として「私道部分南側・北側合計約七七・五四平方メートル」との記載があり、「重要事項説明書の追加(区分所有建物)」には「敷地に関する権利の種類及び内容」の「実測面積」及び「登記簿面積」はそれぞれ五二九・六六平方メートルとされ、「建築確認の対象面積」は四五二・一二平方メートルとされていた。また、根拠資料として添附されていた昭和五六年四月二七日付けで土地家屋調査士が作製した「地積測量図」は、本件土地の一部の地積を四五八・〇〇平方メートル(バイセキの二分の一の欄では四五八・〇〇七九五六平方メートル)、本件土地の残部の地積を七一・六六平方メートル(バイセキの二分の一の欄では七一・六六〇一六〇平方メートル)としており(両者は後に合筆された)、同じく同年六月二六日付け「敷地面積表」は四五二・一二八四五九平方メートルとしていた。なお、右地積測量図においては、隣地境界にコンクリート杭、鋲、官民明示線、金属票、刻ミ等の標示がある。
しかし、右地積測量図等による建物敷地部分の面積四五二・一二平方メートル、私道部分の面積七七・五四平方メートルは、いわゆる建築基準法四二条二項道路の道路境界線で区分した建物敷地と私道部分の面積であり、実際の私道部分の面積ではないことが右図面上から明らかであって、他に私道部分の面積を明らかにする証拠は存しない。したがって、当該道路部分の地積が明らかでないので、評価要領により、〇・九〇の補正率を適用す判ることとなる。
(五) 以上のとおり、被告による本件価格算定過程には一部妥当でない点がある。しかし、本件訴訟は、固定資産課税台帳の登録価格の適否についてのみ、固定資産評価委員会に対してその審査決定の取消しという形で争う訴訟であって(地方税法四三四条)、また、評価は様々な評価要因の調整過程の結果であるから、評価過程の個別的要因について合理性が欠ける点があるとしても、結果としての評価額が客観的時価を上回らなければ、登録価格自体は違法とはならないと解すべきである。
(1) 平成五年一月一日から同六年一月一日までの地価下落率について
〔証拠略〕によれば、灘区の地価公示地(住宅地及び商業地)のうち、平成五年及び平成六年の地価が公示された二〇件について、平成五年一月一日から平成六年一月一日までの各地価下落率は、約二七。一四パーセントないし約一三・九八パーセントであることが認められ、本件土地ないし本件標準宅地の地価下落率も大きくても二八・〇パーセントを超えるものではないと推認することができる。
(2) 本件土地の客観的時価について
以上の認定事実に基づき本件土地の賦課期日における客観的時価を求めると、以下のとおりとなる。
本件標準宅地の平成六年一月一日時点の一平方メートル当たりの価格(客観的時価)は、評価調査の基準日である平成四年七月一日を価格調査基準日とした鑑定評価価格の一平方メートル当たりの価格が八三万円、平成五年一月一日までの時点修正率が〇・八四〇、右同日から平成六年一月一日までの時点修正率が〇・七二〇を下らないことを基に判断すると、五〇万一九八四円を下らないと推認することができる。そして、本件街路の路線価を五〇万一九八四点とし、本件土地の評価対象面積を五二九・六六平方メートル、奥行価格逓減率を〇・八八、不整形地補正率を〇・九五、道路についての補正率〇・九〇、評点一点あたりの価額を一・〇〇円として計算すると、本件土地の価格(客観的時価)は二億〇〇〇四万八七四八円を下らないものと推認することができる。
(3) 原告主張の評価計算について
原告の主張する「国の路線価」を基にした評価方法は、独自の評価方法であり、採用することができない。
(4) そうすると、被告決定による本件評価額は、賦課期日である平成六年一月一日時点における客観的時価を上回らないものということができる。
(5) 以上によれば、被告認定に係る本件登録価格は客観的時極を上回るものとは認められず、本件決定は適法である。
三 結論
以上のとおりであり、原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 將積良子 裁判官 田口直樹 大竹貴)
(別紙)
図面1
本件土地ないし本件建物敷地(概略)
<省略>
図面2
<省略>